温泉用循環ろ過装置とは、浴槽の湯を一度に全量入れ替えるのではなく、ポンプで浴槽から水を吸い上げ、ろ過と消毒を行ってから再び浴槽に戻す仕組みのことです。
温泉にはさまざまな天然成分が含まれており、そのままでも健康やリラックスに良い効果が期待できますが、多くの人が入浴すると湯が汚れたり、衛生面で問題が生じたりする可能性があります。そこで、循環ろ過装置を使って定期的に湯をきれいにしながら戻すことで、良質な温泉体験を継続的に提供できるようにしています。
循環ろ過装置の最大の強みは、限られた湯量でも浴槽水を常に清潔に保てることです。フィルターでゴミや湯垢を捕集し、塩素などの薬剤で雑菌を抑制すれば、多人数が利用する大浴場でも透明度と安全性を維持できます。
特にレジオネラ症対策マニュアルが求める「浴槽水量を1時間で全量以上ろ過」「残留塩素0.4〜1.0 mg/L」(※)という基準を満たせば、公衆浴場としての水質基準を安定してクリアできます。さらに湯温を一定に保てるため、季節や時間帯による温度ムラが生じにくく、衛生上は安心です。
一方、装置そのものがリスクを抱える側面も忘れてはいけません。配管やろ過槽の内部は温かく栄養分もあるため、洗浄を怠るとバイオフィルムが形成され、かえってレジオネラ属菌の温床になり得ます。週1回以上の逆洗浄・年1回の系統洗浄が推奨されるのはこのためです。
また、塩素消毒はどうしても薬剤臭や肌への刺激を伴い、温泉本来の香りやとろみが薄まる点を気にする利用者もいます。安全確保と天然らしさの保持をどう両立するかが衛生面での大きな課題です。
費用の面では、循環ろ過装置は長期的なランニングコスト削減が可能です。湯を再利用できるため、新たに汲み上げる源泉量や水道水を大幅に削減でき、加温に要する燃料も抑えられます。源泉の湧出量が限られる小規模旅館でも、大浴場を運営できるようになり、結果として客単価や回転率の向上が見込める点も経済的メリットです。
ただし、循環ろ過装置の初期投資は決して小さくありません。浴槽規模によってはポンプ・ろ過器・熱交換器・殺菌装置・配管工事を合わせて数百万円から数千万円に達し、小規模施設では大きな負担になります。導入後もポンプの電気代、薬剤費、ろ材交換、定期点検・修理などの維持費が発生します。
温泉成分が金属を腐食しやすい地域では、装置の寿命が短くなり、予定より早い更新が必要になる場合もあるため、減価償却と更新費を織り込んだ資金計画が欠かせません。また専門知識を持つスタッフを確保できない施設では、外部業者への委託費が上乗せされる点も考慮すべきです。
浴槽にある水を、まずはポンプで循環ルートに取り込みます。ここで大きなゴミや髪の毛などをプレフィルターでざっと取り除く場合もあります。
方式水が通るろ過器は、砂ろ過・カートリッジろ過・珪藻土ろ過など方式がありますが、いずれも粒子や汚れを取り除く役割を担っています。
ろ過によって物理的なゴミを取り除いたあとは、細菌やウイルスを殺菌します。塩素剤を使ったり、オゾンや紫外線などの物理的な方法で微生物を不活化させたりします。
ろ過や消毒の過程で水温が下がることがあります。そこで、必要に応じて熱交換器やボイラーで湯を加熱し、適温に戻してから浴槽に送ります。
最終的に処理された湯が再び浴槽に戻され、循環することで常にきれいな状態を保つことができます。
一般的に粒子の異なる砂等の多孔質の物体を通し、汚れや異物を除去して清潔な水に導く、というシステムになっているのが循環ろ過装置の特徴。しかし、温泉の場合は人が直接入る場所なので、雑菌が繁殖しやすいのが難点です。
そこで、必ず「塩素剤」を使って消毒し、薬剤の濃度も含めしっかり管理しなければなりません。また、中の砂は水垢等の影響で固まってしまうことがあるので、それを防ぐ「スケール分散剤」の導入がおすすめです。
上記で紹介したポイントの他にも、「温泉成分を損なわない」ことが重要です。 温泉特有のミネラルや成分が健康やリラクゼーション効果に直結するため、 これらを損なわずにろ過する装置がおすすめ。
ノーリツが提供しているろ過システムは源泉に含まれる、大腸菌やレジオネラ菌を除去するべく「砂ろ過材」を採用。 高感度電極と高濃度洗浄を併用することにより、温泉のミネラル成分を保持したまま、きれいなお湯を生成できる循環型システムが導入されています。
また、長時間に渡って大流量のお湯を扱うだけに、事業者として困るのは、機器がトラブルを起こしてお湯が止まってしまい、お湯の清潔さや温度を保てなくなること。 ノーリツでは何よりも「安定稼働」を意識した徹底サポートを強みとしています。
「かけ流し」では解消できないお湯の汚れを強力にろ過する、温泉水対応の屋内設置用ろ過システムです。ろ過材には、高いろ過能力の「砂ろ過材」を採用。水資源を有効活用して、衛生・低コスト、省資源にも貢献します。
ろ過方式やろ材の違いなど、循環ろ過装置にはさまざまなタイプがあり、どうやって決めたらいいのか分かりにくいのが実情。
循環ろ過装置選びで鍵となるのは、ポンプや殺菌装置を含む水回り機器をセット提供するメーカーかどうか。設計から保守まで一括管理でき、メンテも初期費用も削減可能です。温浴施設、プール、観賞用の池、それぞれの用途に最適な3社を厳選してご紹介します。
温泉に含まれる成分や、入浴者が増えたときに発生する汚れを除去して、透明度や衛生面を保つためです。濁りやにおいが抑えられ、入浴者も安心して温泉を楽しめます。
常に新しい温泉水を大量に注ぎ込むと、エネルギーや水資源が無駄になりやすく、コストも跳ね上がります。循環ろ過によって水を再利用することで、資源を節約しながら効率よく温泉の運営が可能になります。
衛生面の基準を保つために定められた法規やガイドライン(例えば公衆浴場法など)に適合させるため、適切な水質管理が欠かせません。循環ろ過装置はその基準を満たしやすくし、入浴施設の安全性を高める役割を果たします。
こちらは株式会社カケンの循環ろ過装置導入事例。宮城県や埼玉県に店舗を展開している温泉施設「極楽湯」のほか、千葉県や神奈川県、静岡県、三重県、滋賀県、大阪府、和歌山県、奈良県など、関東・関西問わず幅広いエリアで使用されていることが分かります。
同社の温泉循環ろ過システムは浴槽のお湯をこぼす方法ではないため、底面の汚れにも対応しているのが特長。常に衛生的な浴槽を維持できるのはもちろん、お湯を循環させられるので水道代・燃料代の削減にも役立つでしょう。また、メンテナンスフリーということですから、初心者の方でも利用しやすいのがポイントです。
引用元:株式会社カケン公式サイト(https://www.e-kaken.co.jp/s/service/system/case.html)
このように、温泉における循環ろ過装置は製品によって特徴が異なります。対応環境やこだわりポイントは会社ごとでもさまざまですが、特に温泉の場合は塩素での殺菌や適切な温度管理が必要となるため、基本的には循環ろ過装置とつながる水回りの機器をシステムとしてセットで提供してくれるところを選ぶのがおすすめです。
このサイトでは循環ろ過装置を取り扱っているメーカー38社の情報を取りまとめています。その中から、循環ろ過装置を含む関連機器をひとまとめにして提供している会社をピックアップ。さらに、問い合わせ窓口を集約することで導入後のアフターサポートも安心の会社を、「使いたい場所」別におすすめのメーカーとしてご紹介しています。
温泉やホテルの浴室、
高齢者施設向け
プール向け
観賞用の池や水槽向け
選定条件:
Googleで「循環ろ過装置」と検索した結果の120件、および「業務用ろ過装置」と検索した結果の160件から、循環式の業務用ろ過装置を取り扱っていることが公式サイトに記載されている会社38社をピックアップ。(調査日:2023年7月4日)
・ノーリツの選定理由:お湯専用の循環ろ過装置を提供していることが公式サイトに記載されている31社の内、ろ過装置の前後工程で使用する機器(熱源機、ろ過ユニット、ろ過昇温ポンプユニット)をひとつのシステムとしてセットで提供し、かつメンテナンス窓口を一本化していることが明記されている唯一の会社として選出
・エヌアイティの選定理由:プール専用の循環ろ過装置を提供する29社の内、ろ過装置の前後工程で使用する機器(5方弁、ヘアキャッチャー、ポンプ、熱源、殺菌装置、制御盤)をひとつのシステムとしてセットで提供していることが明記されており、かつメンテナンス窓口を一本化している唯一の会社として選出
・石垣の選定理由:観賞用の池や水槽専用の循環ろ過装置を提供する11社の内、ポンプが一体化したろ過装置の前後工程(ファイバーキャビン・トルネードキャッチャー)をひとつのシステムとしてセットで提供していることが明記されており、かつメンテナンス窓口を一本化している唯一の会社として選出